2011年8月4日木曜日

数と量、数字の話

小学校の算数では、「量(りょう)」のイメージを使って「数(すう)」の概念を獲得させます。りんごとか、みかんとかいろいろなもののかずを数えて数とは何かを構成させるわけです。でも、そもそも数と量は別物です。象5頭とマッチ棒3本をたし算することにはあまり意味はないでしょうが、「5+3」はできます。量を使って数を理解させたとしても、量と数は同じものではないのです。

そして最も厄介なのが「数」と「数字」の違いです。数の概念に対して、それを数字という記号で表すことは、とても優れた発明ではありますが、お互いが不可分であると考えてしまうと、無用な混乱を生む原因となることもあります。つまり「1」という記号を使って「いち(一)」を表すことに必然性はないのです。このことは、教える側がしっかりと理解していなければならないことだと思います。

そんな中で、こんな表現を見つけました。







2 6

図1

んっ!?何かおかしい。□は、低学年で使うブロックのイメージです。一番上の位の表記がなければ、「2」と「6」であって「26」ではない。子どもたちもそう考えるでしょう。教科書では、(もう少し間は詰まっていますが)

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2 6

図2

と表現するのが一般的です。十の位のブロックが表している「量」は、「数」で言うと「20」です。しかし、十の位には「2」という数字しか書かれていない。十進位取り記数法では、桁によって位を表し、一の位の左隣は十の位ということになっているので、そこに書かれた「2」という数字は「20」を意味し、「二十」と読まなければならないことになってるのです。これを「規約的表現」と言います。平たく言えば「お約束」という訳です。つまり、「26」と書いて「二十六」と読むことには必然性があるわけではなく、約束だからそうしているだけのことで、「206」と書いて「二十六」と読んだって良いわけです。でも、そうすると計算をするときにややこしくなったり、位が増えると0のかずが多くなりすぎてわかりにくいなどという問題があることから、利便性を考えて今の十進位取り記数法がより使いやすいということで普及したにすぎないのです。

だから、十の位に一の位と同じブロックが2つあれば、量として「2」なのですから、数でも「2」として捉えられてしまいます。そこに書かれる数字が「2」だからと言って、量や数までも2にしてはいけないのです。十の位はあくまで「10の束」の個数が数字になっているのだということに注意しておく必要があると思います。これは、□をすべて1円玉に置き換えてみると、簡単に理解できると思います。十の位に1円玉を2枚おいても20円にはなりません。十を表す10円玉が必要になるのです。
#このように、一の位に置くものと十の位に置くものが別のものなら、子どもたちにも理解できると思います。

それを、図1のようにしてしまうのは、具体物を使って「10の束」の考え方を導入(はしごをかける)しておいて、それがわかったから「本当は違ったんだよね」とはしごをはずしていしまうようなものです。 ますます、算数なんて信じられないという状態になり、混乱を煽るだけでしょう。

同様に、お金(札)のイメージで一の位に[ 1 ]のカードが6つ、1/10の位に[0.1]のカードが4つで、「6.4」などと表す場合も、[0.1]のカードは数を表しているのであって、1/10の位に書かれる数字を表してはいません。数字で1/10の位に0.4を書いたとすると、それは「0.04」という数を表します。この場合も[0.1]のカードの個数(枚数)が数字になっているのであって、数は「0.1が4つ」で良いはずです。

ここからは余談ですが、私は、「数が数字のスキンをかぶっている」という理解をしています。つまり、「26」は「2」と「6」が並んでいるのではなく、「二十六」という数が「26」という数字のスキンをかぶっていると考えます。そうすると、数と数字の違いがわかりやすいからですが、これが万人に受け入れられるものとは思っていません。人によっては、数を色で理解している人もいるようですから、理解の仕方も様々なんでしょうね。

大切なのは、「二十六」を「26」と表すお約束なのだということを繰り返し徹底することだと思います。6のバックに0が隠れていることをイメージさせるだけでもだいぶ違います。(そういう教具を作ったことがあります)その方がずっと価値的だと思います。だって、「26」の「2」は「二」ではなく「二十」なのですから。

【追記】そろばんの考え方は、 図1の表現に近いと思います。ただ、そろばんの珠は、桁を離れて移動しませんし、低学年の教科書にそろばんは出てきません。同じ珠が並んでいるようですが、「その位専用の珠」であって、他の位への転用は不可能です。その昔、地面に書いた線に石を並べて計算をしていたというのがそろばんのルーツとされていますが、それがそろばんの形に(つまり「その位専用の珠」に固定された)なったのは、単に持ち運びが便利であるという理由だけにとどまらないと思います。(2011.9.11)

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